相続した不動産の名義変更は必要か?~豊島区の司法書士事務所です~
故人が不動産を所有していた場合、その不動産は相続人が相続(引き継ぐ)することになります。 日本では、不動産を誰が所有しているかどうかは、法務局で管理している「登記」という記録により管理されているため、不動産の所有者が変わったときは、法務局に不動産の所有者が変更(名義変更)した旨の申請をすることにより、新たな所有者が記録されます。
一般的に登記に記録されている所有者を所有者であると信頼して売買等の取引がなされる等、登記記録に対する信頼は高く、所有者が変わった際は、法律で名義変更を義務付けられているように思いがちですが、実は名義変更は義務化されておらず、名義変更するかどうかはその時の所有者が自由に決めることができます。
義務でないのであれば、名義変更するのもお金がかかりますし、そのまま放っておいてもいいやということにもなってしまいますが、それはそれで後々トラブルになってしまう可能性を秘めていますので注意が必要です。
例えば不動産をAさんとBさんが2分の1ずつ相続した後にその不動産を売却したり、土地を担保にお金を借りたりしようとすると、相続により名義変更があった旨の申請をして、登記上AさんとBさんが2分の1ずつの所有者であるとの記録がなされている必要があります。
しかし、とくに不動産を売却や担保に入れる必要性がなく、名義変更を放っておいたまま、AさんやBさんが亡くなってしまうと、その不動産の所有者は、Aさんの相続人と、Bさんの相続人となります。 仮にAさんの相続人をCさん、Dさん、Eさん、Bさんの相続人をFさん、Gさんとすると、 不動産の所有者はCさん、Dさん、Eさん、Fさん、Gさんとなります。
そしてまた名義変更をしないまま、CさんやDさんが亡くなるとまた新たな所有者が現れ…
というように時間が経てば経つほど相続が繰り返され、その不動産の所有者が増えていきますし、増えていく新たな所有者は関係性が薄い親族になっていきます。
実はこういった何世代も相続後の名義変更がなされないまま、最近になって名義変更が必要になり、どうすればよいかという相談を受けることは結構あります。
(おそらくほとんどの司法書士が経験したことがあるのではないかと思います)
このような事例の場合、すべての相続関係を調査するため、大量の戸籍を取り寄せ、知らない親族が所有者であれば、その相続人の住所を調べて手紙を送り、というような膨大な時間と労力を費やすことになってしまいます。
それでも、すべての所有者と連絡がとれ、同意も得られれば名義変更も可能ですが、それができなければ不動産の売却等をあきらめなければならないこともあります。
もし、不動産を相続された際には、是非こういった事例を参考にして名義変更をすべきかどうかご検討ください。
私個人としては、親族がお亡くなりになった直後は様々な手続きや対応で忙しいと思いますので、相続の半年から1年後ぐらいの間に司法書士に相談することをお勧めします。