医療法人(財団)の利益相反取引について~豊島区の司法書士事務所です~
少し前に私が対応した、医療法人(財団)が所有する不動産を同法人の理事が購入する際の登記手続きに関する話です。
(都内の法務局で登記申請した話ですので、同業者の方はその点にご留意ください)
まず、前置きとしてざっくりとした説明ですが、法人とその法人の役員が取引をするときに法人に不利益が生じる可能性がある場合の取引を利益相反取引といい、利益相反取引を行う際は法人の利益を損なわないように法人の承認を得なければならないというのが法律上のルールになっています。
医療法人に当てはめて考えると、医療法人が所有する不動産を同法人の理事が購入することになりますので、理事の権限で購入金額を勝手に決めることもできてしまい、相場から著しく低い金額で理事が不動産を購入することもできてしまう訳です。
しかし、そうすると法人が一方的に不利益を被ってしまうことになるので、法人の利益を守るために売買契約に関して法人の承認を得なければならない。ということなります。
(この考え方は法律の一般論で、これまでに私が対応したケースで、意図的に法人が一方的に不利益になるような取引を行おうとした事例は見たことはありません。)
今回は不動産の売買ですから、売買契約が成立すれば法人から理事個人に名義を変更するわけですが、その名義変更の登記申請の際に法人が売買契約を承認しましたという書面の提出を求められます。
一般的に司法書士が名義変更で関与する利益相反取引は、株式会社と同会社の取締役の取引というケースが多く、その場合は会社が売買契約を承認した書面として「取締役会議事録」と会社の「登記事項証明書」が該当します。
不動産売買を承認したという内容の「取締役会議事録」とその取締役会に参加し、記名・押印した人物がその会社の取締役であることを明らかにするために「登記事項証明書」を併せる訳です。
(当然ですが、会社の登記事項証明書には取締役の全員が記録されています)
同様に医療法人も「理事会議事録」と「登記事項証明書」で問題さそうですが、実は医療法人の登記事項証明書には理事長の記載はあってもその他の理事は記載されていません。
そのため、理事会議事録に記名・押印した人物がその法人の理事であることを証明するためには別の書類が必要となります。
ということで法務局に必要書類を問い合わせたところ、医療法人における利益相反取引による名義変更の登記申請には、
・利益相反取引を承認した「理事会議事録」(実印での押印と印鑑証明書の添付も必要)
・理事会議事録に記名・押印した理事を選任した時の「評議員会議事録」(実印での押印も印鑑証明書も不要)
が必要とのことでした。
レアケースかと思いますが、同様の申請で本記事を参考にされる場合、申請される地域によって法務局の運用は異なりますし、運用自体も変更となることもありますので、最終的にはご自身で法務局にお問い合わせいただくようにお願いいたします。